最高裁判所第二小法廷 平成10年(行ツ)114号 判決 1999年1月22日
上告人
有限会社三晃住宅(X)
右代表者代表取締役
石見義孝
右訴訟代理人弁護士
浅古栄一
被土告人
千葉県印旛土木事務所長(Y)
藍重光
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人浅古栄一の上告理由について
原審の適法に確定した事実関係の下においては、本件各土地は市街化調整区域と定められた時から本件処分の時まで継続した宅地であったとは認めることができないから都市計画法四三条一項六号ロ所定の「すでに宅地であった土地」に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原判決の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうか、又は原審の認定に沿わない事実に基づいて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 福田博 北川弘治 亀山継夫)
【上告理由】
第一 原判決の都市計画法第四三条一項六号ロの解釈は誤りである。
一 同法四三条一項の「市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域」とは、宅地も含むが、それ以外の土地、即ち山林も含むものである。宅地でなければならないとの限定はどこにもない。
というのは、二九条二号及び三号との関連からこのことが明らかとなるのである。そもそも二九条二号、三号の場合、即ち「農業、林業、漁業の用に供する建築物や駅舎等の建築目的で行う開発行為」の場合は二九条の開発許可は不要なのである。
更にこれらの建物を新築する場合は、建築についての知事の許可も不要なのである(二九条一項本文)。即ち二九条二号、三号の建物を建てるには、開発行為をするにも、更には建物を建築するにも知事の許可は不要とするのである。
それ以外の建物を建築する場合は知事の許可を受けなければならないが、二九条一項各号に該当する場合は二九条二号、三号の建物を建てる場合と同じだというのである(四三条一項但し書)。即ち同条六号(いわゆる既存宅地)の場合、土地の開発許可も建物の建築許可も不要となるのである。
二 既存宅地に知事の許可不要の下、建物を建築する時、既存宅地の一部に区画を分割してそこに建てる場合もある。これを開発行為(四条一二項)というのか、といえばそうなのかもしれない。
それではこの場合既存宅地の確認の外に二九条の開発許可も必要になるのか否か。もし必要だとなれば開発行為をとらなければならないが、そうすると四三条一項の適用外になってしまう。それでは既存宅地確認の意味がなくなる。逆に言えば、既存宅地の確認さえ受ければその範囲においては開発許可を要しないことにならなければならない。
三 そして、四三条一項六号ロの「その旨」の確認とは、その前に記述されている「市街化調整区域に関する都市計画が決定され、または当該都市計画を変更して、その区域が拡張された際既に宅地であった土地」であることの確認なのである。現在、即ち確認の時まで引き続き宅地であることは確認の対象とはされていないのである。即ち知事は調整区域となった時既に宅地であったことの確認をすれば良いのであって、それ以外のことは確認してはならないのである。
四 四三条はそもそも開発許可を受けない土地について、そこに建てられる建物に関しての要件が定められているものである。この条文の要件に該当すれば開発許可は不要であり、開発許可は問題にならないのである。
それなのになぜ、一旦四三条の要件に該当することが確認された外に、更に開発許可をとらなければならないという要件が出てくるのであろうか。開発許可を取るということが要件なら、そもそも四三条は問題にならないし、四三条一項六号の確認それ自体不要となるのである。
五 宅地の継続性を要件とした場合、地目宅地なのに山林化した場合はどう判断するのか。現在まで宅地の継続性を要求するのと否とでどれだけの実際上の差があろうというのであろうか。その土地は四三条一項六号イで市街化地域と一体性の客観的要件を満たしているのである。それ以上にどうして要件を過重するのか理解に苦しむ。単に税法上の視点から地目変更したことがどうして既存宅地の権利ないし資格の放棄になるのか。全く理由がない。
第二 もし原判決のような解釈をするならば、その解釈は憲法第二九条、第三一条に違反するものである。
一 憲法第二九条はただ収用等の場合だけでなく、広く国家が国民から財産権を奪う場合に適用され、また、同法第三一条は刑事手続に適用されるだけでなく行政手続にも適用されるものである。
二 都市計画法第四三条一項六号ロの明文の規定により、市街化調整区域となったとき既存宅地であった土地、即ち既存宅地(一種の財産権である)が法律の明文の規定によらずに宅地の継続性という独自の解釈をしてその権利(財産権)を否定され(奪われ)るのであるから、憲法第二九条、第三一条に違反すること明らかである。
以上